lona-hallelujahの日記

人の成り行き “一度、あきらめた場所で”

小説「一度、あきらめた場所で」第6声 道を絶たれて

 

また、現状を変えようとし、今度はギターを手に取る。

 

独学で(友人に音楽理論の基礎を少し教わってから)、2年半ほど続けてきたギターでの創作活動。

何か、土台を失った…いや、自分の独立独歩での追究が、あれで終わったのだと感じた今の僕は、これまでの自分の作風に、既存の体系的な技術を取り入れてゆく必要を感じていた。

 

自分自身への「こだわり」が、「普通」の事を、拒絶していたから。

自分のやり方でしか、方法を持っていないから。

自分の範囲でしか、表現にならないから。

だから、「ギター」を通じて、新たな「自分」の基礎を習得してゆく

 

それで、インターネットで探り当てた、自分の妥協範囲に当てはまること。

前進の為に、とりあえずの綱として、申し込んで投げ掛けた、ジャズギター教室の体験教室。道内唯一?の、アメリカの有名な音楽大学卒業者が居て、基礎的なことを本格的に、きちんとした教育を受けた人から理論的に学んでゆきたいと思った僕には…この人なら…と思って申し込んだ…はず…講師が退職したので…とのメールが入り…前日にドタキャンされた…また、

「何かをするための道を紡ぐ行為」は、切られて、振り出しに戻った。

 

 

そして

 

これまで創作の場に使用していた携帯ブログが、突然に運営会社の都合により大規模な改変が行われて、ブログの見栄え、活用方法に打撃を与えられてしまい、そこでの更新を諦めた。

そこで、知り合ったひと、やり残したこと、土台がまた…崩れた 。

 

失ってゆく

 

居場所や

 

信頼や

 

可能性や

 

自信

 

 

 

閉ざされてゆく

塞がれてゆく

止められる

 

 

「僕はそれでも何かをしたい」

 

 

小説家の道を考えようか…?

 

 

その突然に改変が行われてしまった携帯ブログで、ブックマークにしていた方の記事に「ポメラ」の紹介があった。

それは、文章を保存するのに便利な、携帯して持ち歩けて、ワープロみたいなもの。

以前にフリーライターの友人がそのようなものを使うと文章を書くのに便利だと言っていた事を思い出した。

 

迷った

 

何かを始めよう。何かに想いを定めてみよう。すると、その想いを阻害する現実に、気持ちが萎えて、焦点が潰されてしまう事が続いている…

また…そうかもしれないと。

 

もしかしたら、これは病気で、手を広げようとし過ぎることの不安定な精神。

留まることの出来ない、止まることの出来ない、文明社会のような病気。

 

 

札幌へ高速バスに乗り、映画を観に行った。

ファウスト」「アリラン」という映画を観ようと思った。

駅前にあるビッグカメラに立ち寄った。5階建てのスペースに渡る店内の中で、店員の方に訊ねてみる億劫な感覚が駄目で…自力で探し出そうと決めた。見つけられるか不安だったのだが、あっさりと見つけられた。「ポメラ」。

Amazonのレビューで、前もってどんな物なのか、どんな機能があるのか、どんな不便さがあるのか、どのモデルが良いのか…?を勉強してきたので、ポメラのどれを買うのかはすぐに定められた。

本体の色が黒しか置いていなく、店内に見本として置かれていたブラウン系のボディのモデル(といっても、液晶?パネル裏部分だけのブラウン)は取り寄せになると品台にある価格プレートに書かれてあった。

悩んだ…黒か…

いったん、ビッグカメラから出て映画観へ向かった。すこし考える時間が欲しかった。

 

映画観へ着くと、早く着いてしまったのだが、開始時間を勘違いしていたようで、思っていたよりも1時間後に上映される。

それまでの2時間半くらいの空白が空いた。

とりあえず映画観内の喫茶店で昼食を取り、そのまま居座るのも何だかで…近辺を探索してみようと考えた。

会計時、喫茶店の綺麗な目をした女性店員に、上映時間までの時間をつぶす…ために、

本屋が近辺にあるか訊ねると、すこし離れた場所にあるそうで、近いところでは大通り公園駅の地下街に古本屋があると教えてくれた。とりあえずそこへ向かうことにした。

 

地下街に入り、辺りを見渡しながら歩く。ここはショッピングモールになっている。人が絶えず通り、すれ違う。僕はそれが息苦しい。緊張感。僕は自意識過剰に歩いている。

本屋を見つけるが、教えてくれた古本屋ではない。地下街は広い…。地上へ出る階段に向かった。何かないかと探しながら歩く。札幌は人が多い。地元とは違う。歩く。また喫茶店へ?いや、座り続けるのも疲れてしまう。歩くことが気分を支える。郊外の方へ出る勇気はない。そこまでは歩けない。周辺を、駅の方角への感覚を見失わないように意識しながら歩く。生々しさが有る、現実の。生活がある。それぞれの。札幌に住む人々の。光景は眼に、映る。ここは外国でない。外国ではないが、自分が異邦人なんだ。居場所はない。若者は? 路上に座るのか? 喫茶店へ? お金が掛かる。だから、路上に。人々の息遣い。だが、疲労の。いや、高校生は覇気がある。若いスーツを着た男たちは景色の中、慣れたみたいに。路肩に停車するトラックからは荷物が出入りする。今日の天気は曇りで、時々、ぽつりと降る。気温はちょうど良く。

ひたすらに歩いた。

 

「何処か休める場所」を探し、歩くだけ、ただ、歩いただけ

立ち止まることが出来ずに、自分の居場所のなさを感じただけ

 

映画館はアーケード街に面し、

観念し、映画観に戻る。上映まで、まだ30分以上ある。

 

ファウスト」は、時間的に都合が悪いのであきらめ。

アリラン」を観た。

そこでは、かつての著名な映画監督が直面するスランプ…創作することへの葛藤。

失い、塞がれ、自信が揺らぎ、閉ざされた、その苦悩が、僕の現状と重なり合ったようで、それは、ノンフィクションな出来事だった。

 

外は

 

雨と、風

 

夜の中へ入ってゆく

それは広がりではなく

だれか、仄暗い、小道 と言った

夜の中へ入ってゆく

 

帰りの高速バス。

携帯電話からAmazonのサイトにアクセスし、「ポメラ」を注文した。

誕生日に届く予定だ。

自分へのプレゼントになる。

 

雨と、風

帰り道なのか

次第に強く

雨と、風

打ち解け合い

だれか…仄暗い、小道 と言った

よるのなかへはいってゆく

 

そして、産まれた

 

 詩

 

 

空洞の連なり

 

反響となり、還り

 

夜の中へ

 

次第に

 

強く

 

打ち解け合う

 

雨と、風

 

互いに消し合う

 

よるのなかへ

 

誰か

 

仄暗い

 

小道

 

と言った

 

夜の中へ入ってゆく

 

 

そして、産まれた

 

 詩

 

 

 

                暗闇

 

 

 

僕は何か、狭い現実からの抜け道となる方向が、ただ…欲しい