小説「一度、あきらめた場所」第10声「3日間の旅」第2夜
ホテルの喫茶店で、朝食を食べる。
感じの良いおばちゃんが作る朝のランチメニュー。
特別なものではない、懐かしさのもの。喫茶店には僕、独り。
窓のそと。ビルの通りを人がぽつんと歩く。
それぞれの人生の勤めへ向かい、気持ちが交差している。
僕の今日の勤めは、函館へ向かうこと。
札幌駅から、高速バスで函館へ向かう。
予約制の車内は、以外に、人が乗り込んだ。
目的地までの時間は長くーー僕は溜めていた文章をポメラに打ち込んだり、ノートパソコンの中の文章を整理したりーー
そして、本を読んだ。
“フェルナンド・ペソア最後の3日間”
という本。
これは、実際に存在した詩人のことを描いた作品で。
僕が好きな詩人で、好きな作家が書いた作品でもある。
そういった、思いがけない「邂逅」として、
また、この僕の旅の「3日間」というテーマもそこに「邂逅」している。この3日間で、読み終える予定で。
Amazonで注文した。
天気は、悪くない。
本町を「もとまち」と読んだおかげで、「元町」に着いてしまった。
高速バスが無事に、函館に着き。僕はまず、予約していたホテルへ行こうと思ったのだが…
高速バスから下車して、とりあえず郵便局が眼に入ったので、局員さんに聞いたんだ。「もとまち」へ行くバスはどこにありますか?って…ってね。とても親切に、親しみやすい人柄の局員さんたちで、丁寧に説明してくれて、バスの時刻表のコピーもくれたんです。でもさ、そんなに良い人でも気づかないよ。
「本町」を「もとまち」と思い込んでいるなんって、ね。
「もとまち(元町)」
そこは、港に、カモメ。異国のような町並み。教会が多い。
風が冷たく、ホテルの前で客を待つタクシー1台。
ホテルの住所(本町)を探すも見当たらず、急斜面の丘を歩きながら、民家の住所プレートを目印にする…気づく、
「元町」? 「もとまち(本町)…?」 「本町は、ほんちょう?」
ホテルで拾った霊が、ここへ降りるために、遭わせたのか。
その用が済んだことで、僕は「元町」に来ていることを住宅の壁に掛かった住所の表札で認識した。かも
タクシー拾って、本町へ向かった。
「シエナ」というホテル
以前に、一度、来た事があって、もう一度来たかった。
イタリアのシエナという地名で付けられた。ホテルの内装は、高級ではないのだろうが、センスの良い時間経過された佇まいを感じる。
その場所に、何か、もう一度
向かう用事があるような気がして。
僕の旅の目的は、何処かを観光することではなく、
独りの時間を過ごす。集中する環境。そこで気持ちの整理をすること。
この場所が一番、雰囲気が合い、ちょうど良く思った。
シエナの夜、隣のコンビニで買った弁当を食べて
パソコンの中の文章と自分の頭の中の課題
部屋のなかの止まった時間に落ち着いた。