lona-hallelujahの日記

人の成り行き “一度、あきらめた場所で”

小説「一度、あきらめた場所」第16声     「夜の切符」

 

夜の通貨 支払って
夢の切符 掴んで乗った
今夜の癒しを求めて
昔の表情を思い出しに
夢のなかで作り直される脚色された顔
最後に言いかけて 言われることのない言葉 聞きに
夢の色彩が 淡い色から 次第に濃く
入り込んできた現実の影に侵される 
次第に恐くなり 
夢の窓の外 覗くと 暗がりが 現実を映す
遠巻きに 繰り返す 現実のすり減りを感じ
次第に恐くなり
僕は 朝までのやり過ごし方 分からなくなった


夜の通過
夜の通過が恐くなる
明日は仕事
あと何時間か 布団に潜れる
何度か目が覚めることが うれしい
それで得をした 気分

起き上がる重さに 憂鬱を感じ
やっとの思いで 身支度を 整えて

車内のラジオ
忘れさせてほしい
不安定な自信 揺らいで
うまく今日を乗り越えられるか心配に
信号 止まりたい
会社までの 猶予が欲しい
気持ちを立て直す
そのための立ち止まり

何が僕を 照らすかな?
この朝の陽? 
帰りの夕焼け?
雨が降ったら、雲の隙間?
残業した、夜の静けさ?

帰り道
僕は解放された気持ちでいる だろう
でも次の日が 視界にぐらつき
その繰り返しが

僕はここのところ
自信がない

灰の中の夢で、記憶と遊び
燃えかすの夜が、しつこく、月を惑う
目覚めた覚えのない現実に

透明な 透明な 青さ
布団の中に潜れた 穏やかさ


恐い夢見たの?
と、あなたは話しかけ
僕は還る場所を知る