lona-hallelujahの日記

人の成り行き “一度、あきらめた場所で”

小説「一度、あきらめた場所」第28声     「終わった唄のために-誰かの面影に-」

 -誰かの面影に-

 

 

   

  あの娘ーー誰かに似ていた

 

 

 

そうこうして…日々は過ぎていった。

 

仕事の中で、あの娘と時間を過ごす。

一度、仕事の帰りにあの娘の家まで車で送り届けたことがあった。

他愛のない会話で-それを心がけて-普通の会話を作って、

気持ちのないように…気持ちの何処かあるように…仕事帰り、車内の時間は過ぎて、

その時間が特別なものでないように、そのまま自宅の前で降ろした。

その頃、好きな気持ちは隠したままでーー

 

そういうことじゃないんだよ
どの方向にも
険しさが
行き交う歩道に
渦巻いて
人生飛び込んで
深く潜ることを選んだら
自分の真摯な魂を
貫いてゆくだけ

きっと間違っていたんだ

正解が欲しいが

たぶん、もう遅い

外れた道に
石ころみたいな魂が
転がっている

そういうことじゃないんだよ
どの方向にも
険しさが
行き交う歩道に
渦巻いて
溝に飛び込んで
深く潜ることを選んだら
自分の真摯な魂を
貫いてゆくだけ

きっと間違っていたんだ
きっと間違えていたんだ


間違っているとしても


「恨むんなら自分を…」と分かってる

車で通り過ぎるとき
振り返ってしまったよ

そうだったのかもしれないし
そうじゃなかったのかもしれない

 

あの娘は、過去の誰かの面影に

引き摺っていたかもしれない、誰かの面影に…似ていた。

 


夜風が吹いて 涙が溢れて
夏の夜更けに 想いが溢れて
独りに気づいたら
道の半ばで とんずらさ

街へ出よう
何処か 抜け出せるはずだし
その先は きっと
希望が在るはずさ

夜道を歩く 街に流れて
真夏の夜空は 涙目にさせる
独りに気づいたら
道の半ばで とんずらさ

何処へ行こう?
もっと 抜け出せるはずだよ
この先は きっと、
何かが在るはずさ

ここを出よう
きっと 抜け道が在るはずさ

(行く宛てもないのに…?)

何処かへ行こう
もっと…
希望が在るはずさ


淀みながら
淀みながら
気流が入り乱れ
変わるはずだ
変われるはずだと
渦巻いている
様々な気流が
心を渦巻き
入り乱れながら
淀んでゆく

淀んでゆく…


これで、変わるはずだ

これで、変われるはずだ、と

開け放たれた扉に
吹きさらしの風が
淀んでゆく

溜まり場になった 心に


挙げ句


よく似ていたね あの娘に
服装が
あのTシャツ
あの後ろ姿
あの髪型
僕はあんまり成長してないのかな?
時間が進んでなかったみたいだ

後ろ姿は追わないよ
時間を進めよう
はっきり分かった
この土地を離れよう

よく似ていた あの後ろ姿は
最期の袖引き

 

 

季節は、秋に近づいた

 

 

風が 吹いて
雨が降り だした
この葉を 濡らす

立ち留まり ふさぎ込んだ
たまり場で 身動きができず
想い出に 縛られて
おいてきぼり

風が 風が吹いて
すべてを 持ってゆく

風が 風が巡り
言い聞かせる
もう いい もう いいんだよ

身動きできない 想い出に
縛られ 立ちつくしていたとき
風が 風が 吹いて
すべて 持っていった

風 風が 巡り
取り払う

もういい もう いいんだと

葉を揺らす
 

 

 思い出す秋の日 ひとりぼっちの夜 

            

              上を向いて歩こう 坂本九