lona-hallelujahの日記

人の成り行き “一度、あきらめた場所で”

小説「一度、あきらめた場所」第30声     「終わった唄のために-いまさら-」

 

まだ秋の話しだったか…

 

「春が来た」と職場の同僚から人づてに聞いた。あの娘に彼氏が出来たこと。

「仕方ないよな…」と僕は思った。

 

あの娘が送った、僕への好意

もしかしたら僕のことを好いていたのかもしれない

それに気づきながら、してきた知らんぷりがあった。

応えないようにする、努力があった

 

今の自分は「やりたいことがある」と

そう思い込んで、いや、そういう風に自分を追い込んで、

自分を創作活動の領域に置きたかった。変な話しじゃない。

そうやって、何かに挑戦したいとき、人は他を諦めたり、集中するための切り捨てをしたりする。

 

迷いもあった。愛せるのか? 愛してもらえるのか? 

僕の心の準備がある。手遅れで気づいたのか

それとも

 

あの若い娘が、誰かのものになるという事が、それほどに悔しかったのか?

自分のものになると思っていたのか

 

いまさら…好きに、本気にならなくても…

 

 

頭に浮かぶ 思い出しては 突き刺さる
置いては行けない 哀愁
とぼとぼ歩く 僕のよこ
車が水を 跳ね上げた

 

この歳になって こんな気持ち 味わうなんて

夏には背丈が 伸びていた 木々が 枯れて
見えていた 景色を 殺風景に
視界から 遠ざけ
未来が 霞む

 

アスファルトに 落とした眼には
ぽと ポト と 雨が 滴る

突き刺すような 痛みが 胸を
かけらと かけらを 重ね合い
染みをつくる

雨と雨、虹にはならない滲み

この歳になって こんな気持ち 味わうなんて

 

かけらと かけらを 重ね合い
アスファルトの乾きを 染め上げる

眼下に広がる 唄のこだまが
街の灯り みたいに
きらきら している

泪か 

いつか 視た 広がり
僕は 視たことが ある

 

 

 まだ誰かの面影 昔 好きだったひと

そのときに そのときも 手を遅れで気づいた 「本気」

本当に好きなひと

どうにもならない事 それ自体ではなく

自分の気持ち

自分の気持ちに気づいたこと

本当の気持ちに素直になったこと

手遅れで

 それが、また、

 

また、そのパターン

 

 

 

それから

 

また人づてに聞いた

あの娘が泊まりがけで旅行に行った事

だめ押しの一手

 

 

そして戻る

 

 

一日

 

使い捨て

 

一日

 

疲労してゆく

 

僕はまた、果たせずに
終わらすことのできない
物事の泥沼のなか

 

一日

 

使い捨て

 

一日

 

疲労が溜まる

 

時間切れまで
カタカタな音
奏でるまで

一日

昨日の続き
ただの、続き

一日中

壊れるまで

僕はまた、迷う
終わらすことのできない
視たつもりのまた夢のなか

 

叶えることの出来ない、夢のなか